【アカペラ】後輩のバンドにフィードバックするときに気をつけたい3つのこと


改善点を述べるのはFBじゃない
アカペラサークル3年生4年生になると後輩のバンドにフィードバックを求められることも増えて来ます。

そうした時に「ここがよくない」「あそこがよくない」と言うフィードバックをする人が一定数いますが、僕はそれは正しいフィードバックの在り方ではないと思っております。僕は本来フィードバックとはフィードバックをする人と受ける人が二人三脚になって創り上げて行くものであり、何故かフィードバックをする人が優位な立場になっているのが疑問でした。

少し話しが脱線しますが皆さんは関西の方とお話したことはありますか?中学校時代から身の回りに一定数の関西人がいる環境で育って来たのですが、なにを隠そう僕は関西の方を心から尊敬しています。関西の方とお話する度に「関西の方は会話を主体的につくるなあ。」と思います。関西の方とお話していると彼ら彼女らは積極的にボケてきますし積極的に突っ込んできます。いずれにせよ全力でその場・その会話を面白いものにしようとしているのです。僕はそんな関西の方のコミュニケーションに心を奪われました。

そんな関西の方のコミュニケーションへの姿勢をアカペラのフィードバックにも取り入れるべきなんじゃないかなと強く感じたので記事を書きます。



1.上手い演奏は”50:50″!
稀にバンドのフィードバックをする際にしかめっ面をしてあら探しをするように聴いている人が居ます。フィードバックを改善点を指摘して次に繋げてもらうための場と勘違いしている人です。いや、正確には、フィードバックは改善点を指摘して次に繋げてもらう場なのですが、それをさも審査の場であるかのように心を無にして聴いている人が居ることに僕は疑問を感じ続けて来ました。

勿論審査の場では常に公平であるべきなので極力感情移入を避けニュートラルであるべきだと僕は思っております。そうでないと主観が強く交じりすぎてしまうリスクがありますから。

ただし僕はフィードバックは少し違うと思っております。フィードバックは演奏に点数をつける場所ではありません。演奏を聴いてその上で自分が感じたことをありのままに伝える場です。なのでもしも釈然としない部分があった時は「ここはこうしなさい」ではなく「私はこう思った」に留めておくべきだと思っております。そして表題にも書いた通り、演奏を聴いて感想を述べるのがフィードバックだと考えるならば演奏の良さは「フィードバックする人と受ける人」の両者にかかっていると思うのです。

先ほど関西人のコミュニケーションを例に挙げましたが、聴き手が演奏を楽しもうと思って聴かなければ演奏が楽しいものになる可能性って半減します。なんなら一流のオーケストラの奏者がバイオリンを弾いてもその演奏に聴き入らなければ感動などし得ません。

参考:Do you have a moment… for pure genius?

1席100ドルでコンサートを行うようなバイオリニストがニューヨークの地下鉄の駅で1時間バイオリンを弾くと言う実験をしたところ殆どの人が足を止めなかったそうです。つまりどれだけ良いものでもそれを感受することが出来なければ響かないのです。

たまにフィードバックの場でバンドの演奏に辛口でコメントしている人が居ます。もちろんそれも大切なことですが辛口でコメントする時は必ず「今の演奏に対する責任の50%は自分にある」と言うことを常に意識して欲しいのです。どんな演奏でも必ず良いところはありますし多少お粗末なところがあってもそれだって個性です。それこそかの有名なPentatonixのライブだっていくらでもフィードバック出来ます。リズムは走りますし音は外しますし。それでも彼らのライブに行った後に「いやー。Penta和音ぼろぼろだし走りまくってたねー。」なんて言っている人は居ないでしょう。


2.ただしマヌケには厳しくあれ!
ただし僕はマヌケには容赦なく辛辣なコメントをするべきだと思っております。
ここでは僕はマヌケとはやる気が無い奏者を指しております。例えば最初の音をとらずに歌い始めてとんでもない音を歌っていたり明らかに歌詞解釈をしていないことが分かってしまうような歌詞の間違いをしたりそもそも原曲を聴いた形跡がなかったり(16ビートで跳ねるはずの曲が単調な8ビートだったり)。これは聴いてもらう人に失礼です。二度と同じことをやらないように注意するべきだと僕は思っております。

逆に自分もマヌケになってしまってはいけません。
例えばバンドが演奏している最中にスマホを見たりあくびをしたり。これは明らかに聴く気が無いことが分かるような行為です。これは奏者に対して非常に失礼です。ちゃんと演奏を向き合わないでフィードバックが出来るわけがありません。

両者ともに誠実であることが大切です。
フィードバックを受ける人は目の前のフィードバックをする人をお客さんだと思って全力で歌うべきですし、フィードバックをする人は目の前の奏者の演奏を主体的に感受すべきです。先述したようにフィードバックの場はフィードバックをする人間とされる人間が共に創りあげるものです。しかめっ面をしてあら探しをする場所でも無ければ、ポッケに手を突っ込んでヘラヘラと歌う場所でも無いのです。


3.啓発的であれ!
僕はある種松岡修造さんが最高の「フィードバックする人」のお手本だと思っております。

もちろん技術的な指導もめちゃくちゃしていますが、彼は技術の指導に加えてメンタルを鍛える啓発的な激励も行っております。僕はこの啓発的な激励こそフィードバックの場において大切なのではないかなと思っております。

例えば自信なさげに歌っている人が居たとしましょう。
その時にあなたならなんて言いますか?

「前を見て歌いなさい!」
「自信を持って!」
「大丈夫だよ!」

僕は「自信をもって」とか「大丈夫だよ」とか「前をみて歌え」とか言われてそれが出来るぐらいならその人はうつむいたまま小さな声で歌うことって無いんじゃないかなと思っております。だから常にこうやって聴くようにしています。

「なんで下向いてるの?」
「声もうちょっとだけでないかな?」

まあ一見すると脅迫にしか見えないので言うタイミングや声のトーン・表情などが大切なのですが僕はこの質問凄く大事だと思っております。なぜならば「自信がないから声が出ないし前を向けない」って言葉が本人の口から欲しいからです。少し横暴なようですがまずは自分が自信がないことを認めなければ自信なんてつきません。脱線しました…。だいたいの場合上手く自信がもてない人って音とりが苦手だったりステージ経験が浅かったりします。もしくはメンバーに対して何かしらのコンプレックスを抱えていることもあります。やり方はいろいろあるにせよ、音楽的技術だけでなく、こういったメンタルの部分をそっとフォローするのもフィードバックの1つの大事なポイントなのではないでしょうか?

「上手いから大丈夫だよ!」と言うと「私本当に音とりが苦手で…」「私ヘタクソなんで…」なんて答えが返ってくるでしょう。そうしたらこういってあげてください。「確かにそうかもね!でも上手いから大丈夫だよ!」って。もしも本当に音とりが苦手で本当にヘタクソならばアカペラサークルには居ないはずです。仮にアカペラサークルの中では苦手な方でも諦めずに頑張っているからこそその場で歌っているわけです。もともとの声が小さかったりする場合があるので声量の部分は一概には言えませんが、少なくとも顔を上げて堂々と歌うことは誰にでも出来るはずです。

「やれよ!出来るよ!(※)」

音とりが苦手だったりコンプレックスを抱えている人程実は強いです。それだけのものを抱えながら逃げ出さずに歌っているのですから顔を上げて前を向いて歌えないはずが無いんです。音楽的な技術ってなかなか向上させることは出来ませんし最後は本人の練習量に関わって来ますが精神的な要素も同じです。

今回は自信がないケースを例にしましたが向き合い方も色々ありますし、そもそも自信が無いケースだけでなく裏付けなき自信だけが先行してしまっているケース(このケースでは練習が疎かになりマヌケになっているケースが多いように感じます)もあったりします。いずれにせよ音楽の技術だけで解決しえない部分って当然あるかと思います。なのでフィードバックの際には音だけでなく心にもしっかりと向き合うことが大切だと僕は思っております。

※それに顔をあげるのって結局はやるかやらないかの2択でしかないですから…ね!


まとめ
フィードバックを頼まれるとつい「何か有益なこと言わなきゃ!」とか「何か改善点探して指摘しなきゃ!」とか思いがちですが、そのバンドの演奏に関してはバンドメンバーの方がよく知っています。そして余程有名なアカペラ曲で無い限り、その曲(楽譜)についてもバンドメンバーの方が良く知っています。なのでそこでバンドメンバーに比べて曲の知識に劣っているにも関わらず「こうしなさい!」と言うのはちょっと傲慢です。そこで敢えて1つの意見を提示すると言う意味も込めて「こうしてみたら?」と言えるとより良いフィードバッカーになれるのではないかと思います。

フィードバックと言われるとついつい力んでしまいますが「感想を言いあう会」ぐらいの気持ちで臨むと、空回りせずバンドとメンバーのことを思ったバンドに寄り添った有意義なフィードバックが出来るかも知れません。

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