「覚えない/忘れる」という技術


僕の友人が面白いNoteを書いていたので紹介したい。

“隙”のある生活

この中で、僕の友人は以下のように綴っていた。

テトリスはブロックを隙間なく積んでいき、列が揃ったらそのブロック列を消すことができる。しかし、心に蓄積されていく情報や思念のかけらはただ隙間なく埋めただけでは消化されない。一度立ち止まって、積まれたブロックと向き合う時間が必要なのだ。

なので今日は「覚えない」ひいては「忘れる」という技術について紹介したい。


フリースロー連続10本

僕が最初に「忘れる」という技術を身に付けようと思ったのは、バスケットボール部で活動しているときだった。

1点差で競り合っている試合では常に「シュートを外したらどうしよう」だとか「パスを失敗したらどうしよう」だとか、いわゆるプレッシャーがつきまとう。その中で特別プレッシャーに弱かった僕は、居残り自主練習中に顧問にプレッシャーの対処の訓練法を教えてもらった。

練習法はごくごく簡単。

「毎日帰る前にフリースローを10本連続で決めろ」

これだけである。7本目ぐらいから緊張しはじめ、10本目は試合さながらの緊張感をもって打つことができるため、プレッシャー下での練習としては最適であった。

が、当時は「これをこなしていればプレッシャーに”慣れる”」と思って練習しており「プレッシャーを”忘れる”」という観点に気づく頃には引退していた。


知覚消去(ACMA:GAME)

僕はプレッシャーに弱いまま社会人になってしまったので、社会人1年目のときにかなり苦労した。

特に新卒で入った会社は毎月研修の順位を壁に貼り出すような会社で、研修の成績に応じてお給料も大幅に上下する制度だったため、プレッシャーの中で日々研修に没頭していた。

そしてプレッシャーの中で、幸にして、良い成績を残すことができたため、絶対に期日遅れが許されない期日に厳しい業務を任されることになった。

ますます仕事のストレスも激しくなり、家路で買った週刊誌を持って半身浴をするのがストレス解消になっていた。そしてこの頃、ACMA:GAMEという漫画で「知覚消去」という特殊能力を使うキャラと出会う。

この能力が素晴らしく「指定したモノの存在を自身の五感から遮断する」というものなのだ。少年の心を忘れなかった僕は、漫画の中の技を現実で身に付けられないか試行錯誤することになる。


不安は受け入れてかき消す

僕はこの能力を知ったとき「指定したモノ」というところに目をつけた。

自分が消したいモノを指定するには、自分が何を消したいのか知る必要があるのだ。

つまり現実世界で僕が知覚消去を身に付けるためには、まずは自分が感じているプレッシャーの原因を明確にする必要があるのだ。

例えば「期日は来週なのに全部で2000行あるプログラムのどこを直せば良いのか未だにわかっていない」だから「工数が見積もれず来週までに終わるのか不安に感じている」そして「自分が担当開発者だから他人にどこが間違っているのか聞けない」と、具体的に何にプレッシャーを感じているのか明確にする必要があるのだ。

流石に勝手に頭の中から期日を消し去ると後々のトラブルに繋がるため最低限上司には状況を報告し(特に当時は新卒だったため)、意図的に不安要素は忘れるように努めた。

不安ごとを考えている頭があるなら、その頭で修正方法を考えた方がよほど良い。

ただ、不安ごとは無意識に脳味噌を占拠してくる。なので、無意識に頭が不安要素について考えているときは一度手を止めて「忘れよ」と心の中で呟いてから作業するようにしていた。


優先度の低いタスクはインプットしない

あれから数年、山あり谷あり、徐々にプロジェクトを任せてもらえるようになってきた。

プロジェクトを持つようになると今度は新しい問題が発生した。

プレッシャーや不安要素を忘れることができても、そもそもインプットしなければならない知識や情報が増えてきたのだ。例えば、課題管理表1つとっても、全部で何百個もある課題を全部記憶するのは厳しい。一方で、課題管理表を見ないと、今ある課題が分からない人間がプロジェクトを握っているのは危険極まりない。

そこで僕はクライテリアを用意して、課題に4段階で優先順位を機械的につけるようにした。加えて、上2つのランクの課題に関しては常に状況・期日を記憶するようにしている。

一方で下2つの課題については記憶していない。

僕は極度の心配性でもあるので、優先度が低い課題でもひとたび気になってしまうと常に頭の中に残り続けてしまうからだ。優先度が低い課題について考えている時間があるならば、その時間で優先度が高い課題を確実に潰し込んでいく必要がある。優先度が低いということは暫くは放っておいても誰も怪我しないのだ。一方で優先度が高い課題は、放っておくと大火事になるから優先度が高いのである。

なので僕はあえて優先度が高い重要課題だけ何回も打ち合わせの場で声に出して確認し、「○○の件」というだけで関係者に内容が伝わるように刷り込みを行っている。優先度の低い課題を忘れるのではなく、優先度が高い課題で頭の中を埋め尽くしている。

優先度が低いタスクは、時間の経過とともに優先度が上がってきたらインプットすれば良いのだ。


本や講義の中身は覚えない

極め付けは、最近では自主学習においても、本や講義の中身を覚えないようにしている。

本であればまた読み直せば良い。講義はノートをしっかりととっておけば別に自分の頭に全部を全部残しておく必要はない。

本当に大事な情報なら何度も読み返すのだから、自然と定着していく。覚えようとして貴重な脳味噌のリソースを使ってまで読み込む/聴き込むのはもったいないと思うようになった。

本は読むが、覚えておくのはせいぜい目次だけで良い。どこに何が書いてあったかなんとなく覚えていればまた読み直せるからだ。どの本を読み直せば良いかわからなくなると怠いので、目次ぐらいは覚えておくと良いと思う。

今は急速に時代が変化している。なので今、本で学んだ知識が5年後10年後に使える保証もない。だからこそ、全部を記憶したり学ぼうとせず「こんなこと書いてあったな」ぐらいで良いと思う。

その中で何度も読み返した情報こそが有益であり、自然と定着した知識こそが大事なところだと僕は思う。


忘れるという技術

重要度の低い情報は頭に入れない、不安要素はしっかりと心の目で見つめた上で忘れる、そうすることで我々の脳は思った以上に良い働きをしてくれる。

学校教育で「覚える」「記憶する」という訓練は積んでくるが、なかなか「覚えない」「忘れる」という技術は身につかない。

だからこそ、僕は「覚えない」「忘れる」というスキルの重要性を声を大にして唱えたい。


最後まで読んでいただきありがとうございます。もしこの記事を気に入って頂けたようであればシェアをお願い致します。非常に励みになります。


コメントを残す